老後の財産処分の方法には様々なものがあります。
贈与
ご親族にそのまま贈与する、あげてしまうパターンです。
メリットは、簡単に任意の相手に財産をあげて、財産の名義を変えてしまえることに尽きます。
デメリットは贈与税の課税です。
したがって、贈与税が課税されないくらい贈与財産の価格が低い場合(1年間で110万円以下)に有効でしょう。
売買
ご親族に売ってしまうパターンです。
メリットは、贈与のメリットに加え、贈与税がかからないことです。
デメリットは、売却なのでご親族が代金を支払う必要があることです。
代金は、「1円でも払えばいい」というものではなく、適正価格を外れると課税の対象となります。
もしもご検討される場合は契約書作成から不動産の名義変更まで弊所が行いますが、課税リスクのご相談は弊所がご紹介する税理士がいたします。もちろん、依頼者様のお知り合いの税理士がいらっしゃる場合はそちらで結構です。
遺言
遺言によって財産について相続する人を選んだり、贈与(遺贈)する相手を選んだりすることができます。
メリットは、贈与税ではなく相続税の課税なので、贈与税の暦年贈与(基礎控除額、年間110万円)よりも控除の枠が高いことによって課税額が低く、又は非課税となりやすいことです。
デメリットは、遺言した人が亡くなるまで効力が発生しないことや、遺言者が容易に遺言を撤回できる点です。
見方を変えれば遺言を容易に撤回できるのは遺言者にとってメリットですが、権利が確定しないことはデメリットとも言えます。
この「遺言」が最大の力を発揮するのは兄弟姉妹の相続です。亡くなられた方の兄弟姉妹やその子供が相続人となった場合、当事者が遠方かつ多数に及ぶ恐れがあります。
場合によっては疎遠な多数当事者の遺産分割協議をまとめるのは困難であり、コストが増大するケースもしばしばありますが、遺言ひとつあれば指定の人に簡単に相続させることが可能です。
「知らない異母兄弟がいました」というケースも無くはないので、兄弟姉妹の相続になりそうな、例えばお子様やご両親がいないご高齢の方は相続関係を調査の上、検討した方がいいでしょう。
調査に関するアドバイスや代行も弊所では受け付けております。
家族信託
委託者(財産を託す人)、受託者(財産を託される人)、受益者(利益を得る人)がいて、自由度の高い契約内容に沿って財産を管理させることができます。
例えば、父親A(委託者兼受益者)が息子B(受託者)にA所有名義の賃貸不動産を管理させ、賃料はAのものにするような契約があります。
そうすることによってAが認知症に至った場合でもBが管理し、場合によっては売却も可能となります。最終的にAが亡くなった場合の財産の所有者も指定できます。
Aが亡くなったらAの妻Cを次の受益者とし、妻Cも亡くなったら息子Bの財産とする契約も可能です。
この構成の場合、信託によって不動産を息子Bの名義にしたとしても不動産取得税や贈与税の対象にはなりません。何故なら、受益者がAなので、実質的利益はAのもののままだからです。
設計が自由な反面、内容についてのご相談もじっくり行うような手続なので、ご検討される場合は詳しくご説明いたします。
成年後見制度
認知症の方に使用できる制度です。いったん認知症になってしまうと「意思能力」が無いと判断され、自らの意思による財産の処分ができなくなってしまいます。成年後見人という代理人が本人に代わって財産を処分する形となります。
財産を処分できるとは言えど周囲のニーズに沿って好き勝手にできる訳ではないのが難点です。
この点が同じ認知症対策である家族信託と異なり大きなデメリットになります。